生成AIで業務を効率化するなら、「毎回同じ手順で、時間がいちばんかかっていて、できた物を人が確かめやすい仕事」から入れるのが進めやすいです。動画編集を請け負う株式会社ヒルウラでは、それが動画の最初の編集版(初稿)づくりでした。まだお客様の仕事には使っておらず、社内で試している段階ですが、人の手で直しまで含めて数日から1週間かかっていた所が、初稿までなら数時間で上がるようになりました(どちらも高取の感覚で、比べた記録ではありません)。
この記事では、ヒルウラが自社の仕事にAIを入れた事例として、困っていたこと、任せる仕事の選び方、つまずいた所、変わったことと人に残った仕事を書きます。書いているのは、ヒルウラ代表の高取です。ヒルウラは、人の編集チームで累計30,000本以上の動画を納品してきた会社です。
どんな会社が、何に困っていた?
ヒルウラは、会社のYouTubeやショート動画の編集を請け負っています。人の編集チームで仕事を回す中で、次の4つに困っていました。
| 困っていたこと | 中身 |
|---|---|
| 時間がかかる | 1本を仕上げるのに、1週間から2週間かかることもあった |
| 編集者が足りない | 腕のいい編集者が見つかりにくく、まとめ役のディレクターが採用と育成で疲れきっていた |
| 費用が上がる | 外の編集者に頼む費用が上がり、利益を圧迫していた |
| 急ぎに応えられない | 副業の編集者が多く、動ける時間が限られていた |
AIに任せる仕事は、どう選んだ?
全部をAIに置き換えるのではなく、仕事を工程に分けて、AIに向く所を探しました。選んだ基準は次の3つです。
| 基準 | 初稿づくりでは |
|---|---|
| 毎回同じ手順か | 間を切る、字幕を入れる、効果音を合わせる、は毎回同じ |
| 時間がいちばんかかるか | 1本を仕上げる中で、一番時間を取られるのが初稿づくりだった |
| できた物を人が確かめやすいか | 初稿を見れば、字幕の誤りや切りすぎは見つけやすい |
逆に、「何を強く見せるか」「会社として出してよい表現か」といった判断は、人に残しました。工程ごとの分け方は、動画編集の初稿をAIで自動化するにはに表でまとめています。
他の仕事でも、同じ3つの基準で見ると、AIに任せる所を選びやすくなります。たとえば、毎週同じ形で作る報告書や、決まった項目を埋める書類などです。
AIにそのまま頼むと、どこが足りなかった?
最初は、AIのアプリに動画を渡して頼むだけでも、文字起こしと字幕までは出ました。ただ、会社のチャンネルで出し続ける動画としては、細かい所が届きませんでした。
- 字幕が、話すより先に出る
- 字幕の区切りや改行の位置がおかしい
- 強調してほしい言葉を強調しない
- 言い直しが残り、カットが間延びする
- 効果音がそれらしくなく、安っぽく聞こえる
生成AIを業務に入れる時、一番つまずきやすいのはここだと思います。「それらしい物」は出ても、自社の決まりどおりにはならない。そこで、「字幕は話し始めに合わせて出す」「字幕は言葉の切れ目で切り替える」「言い直しは声の出だしと終わりに合わせて切る」といった自社の決まりを手順として書き出し、AIがその手順で作るようにしました。ここで、ようやく使える形に近づきました。この仕組みで作っているのが、ヒルウラの道具「AI動画編集くん」です。
質と速さの間で、何に困った?
質を上げようとすると、AIに処理させる量(使った分だけ費用もかかります)と書き出し(編集した動画を1本のファイルにする作業)の時間が大きく増えました。パソコンが1日書き出しに取られ、直しを頼むとまた1日待つ。これでは使い続けられません。
逆に、速さと安さを追いすぎると、前に指示したはずの決まりが守られず、同じ間違いが残りました。
今は、AIにそのまま頼んだ時と同じくらいの時間と処理の量に収めながら、上に挙げた所を手順に組み込んで直すようにしています(高取の感覚です)。直しの時も、変わった所だけを描き直すようにしました。
AIを入れて、何が変わった?

社内で試して変わったのは、時間と、人がやることです。
| 比べる所 | 人の手で作る | AIで初稿を作る |
|---|---|---|
| かかる時間(高取の感覚) | 直しまで含めて数日から1週間 | 初稿まで数時間 |
| 人がやること | 切る・字幕・効果音を手で入れる | 初稿を見て、直す所を書く |
| 投稿の前 | 人が見て直す | 人が見て直す |
上の時間は高取の感覚で、比べた記録ではありません。
社内で測った記録もあります。下は、2026年10月の社内の検証で、それぞれ1つの素材で試した時の数字です(素材の長さと中身で変わります)。
| 測ったこと | 結果 |
|---|---|
| 縦長の短い動画:依頼から、初稿を見て直しを書く画面が開くまで | 28分 |
| 約19分の二人の対談:依頼から、初稿の書き出しまで | 3時間台 |
| 字幕の1語を直した時の書き出し直し(10月14日) | 43.0秒(全部を書き出し直すと93.7秒) |
直しの書き出しが短くなると、直しを何回か重ねる時の待ち時間が減ります。
人に残った仕事は?
社内で試した範囲でも、人の仕事は無くなりませんでした。残ったのは、次の仕事です。
- 初稿を見て、直してほしい所を秒と一緒に書く
- 人名・社名・専門用語の字を確かめる
- 会社として出してよい表現かを決める
- 自社の決まりを、AIが読める手順として書き足していく
とくに最後の「決まりを書き足す」が大事でした。同じ直しを2回したら、それを手順に足す。そうすると、次から同じ直しが出にくくなります。
自社の仕事にAIを入れる時、どこから始める?
ヒルウラの事例から、他の仕事にも当てはまると考えている進め方です。
| 段 | すること |
|---|---|
| 1. 仕事を工程に分ける | 1つの仕事を、毎回同じ所と、判断が要る所に分ける |
| 2. 任せる所を1つ選ぶ | 毎回同じで、時間がかかり、確かめやすい所を1つだけ |
| 3. 自社の決まりを書き出す | 「いつもこうしている」を、AIが読める手順にする |
| 4. 1件で試す | 実際の仕事1件で試し、足りない所を見る |
| 5. 直しを手順に足す | 同じ直しが出たら手順に書き足し、件数を増やす |
最初から全部を任せようとすると、「それらしいけれど使えない」物が出て止まりやすくなります。1つの工程で、使える所まで仕上げてから広げる方が、書き出した手順が社内に残り、次の工程にも使えます。少人数の会社で、誰から試し、どう広げるかは、中小企業がAIで業務を効率化するにはに書いています。
ヒルウラが初稿づくりの手順と道具を、AIの道具であるClaude Codeで作った流れは、Claude Codeで動画編集の初稿を作るまでに書いています。動画の編集にAIを入れる時の担当の分け方は、AI動画編集を社内に導入するにはにまとめています。
よくある質問
生成AIを入れれば、人を減らせますか?
ヒルウラでは、まだ分かりません。社内で試した範囲では、人の仕事は無くならず、中身が変わりました。手で作る時間が減り、見て直す所と、決まりを書き足す所に人の時間を使うようになりました。
AIに任せる仕事は、どう見つければいいですか?
毎回同じ手順か、時間がいちばんかかっているか、できた物を人が確かめやすいか、の3つで見ます。3つとも当てはまる工程から始めると、効果が見えやすくなります。
AIのアプリにそのまま頼むだけでは、足りませんか?
「それらしい物」は出ますが、自社の決まりどおりにはなりにくいです。ヒルウラでも、字幕の出る時間や区切り、強調の仕方などが合いませんでした。自社の決まりを手順として書き出すと、使える形に近づきます。
作ったAIの道具は、そのままお客様の仕事に使っていますか?
いいえ。ヒルウラが作っている「AI動画編集くん」は、いま社内で試しながら改善を進めている所で、お客様の編集の仕事にはまだ使っていません。
相談するには
AIを業務に入れたい、社内で動画を回せる体制を作りたい、といったご相談は、フォームからお送りください。
AI動画編集くんの正式リリースの案内は、公式LINEで先行してお送りします。